今できる最高の「80年代」がここに! 【ストレンジャー・シングス3】のオマージュ芸が研ぎ澄まされている!

 

天邪鬼な性格なので、みんなが「あれ、面白かった!」と話している時は、「ふーん、そっすか」みてぇなスカした面しておいて、全員の注目がそれたらこっそりその作品を見たりします。

この一連の奇行はマジで1ミリも得がないのでやめた方がいいです。

というのも、今さらながら、ストレンジャーシングスのシーズン3を見まして、最高に面白かったので、「配信されてすぐくらいのころ(今からちょうど1年くらい前)に見ておけばよかった…」と本気で後悔したからです。

こんなに面白いなら、当時すでに視聴済みだった人たちはもっと騒いでよね…

 

ストレンジャー・シングス-未知の世界-とは

ストレンジャーシングスは、Netflix(ネットフリック)で配信されているオリジナル作品です。

舞台は1980年代のアメリカの架空の町、ホーキンス。

そこで起こる「不思議な出来事」に少年たちが立ち向かっていく、というお話です。

見たことがない人のために、すごく簡単に説明させていただきましたが、このあらすじで一番重要なポイントは「舞台は1980年代のアメリカ」というところ。

なぜなら、本作は1980年代のアメリカンポップカルチャーへのオマージュがてんこ盛りだから!

劇中に差し込まれる音楽はもちろんのことながら、「あっ、このシーンは、あの映画の…!」という場面が、たくさん出てきます。

主人公の少年たちと同じように、80年代を「少年期」として過ごし、きちんとポップカルチャーを受給してきた人にとっては、ホックホクの作品になっております。

シーズン3で花開いた

さて、そんなストレンジャーシングスですが、なぜ僕は急に「シーズン3めちゃオモでした!」と騒ぎ出したのでしょうか?

正直なところ、シーズン1~2は、そんなにハマらなかったんですよね。

いや、誤解のないように言っておくと、シーズン1~2も面白いんですよ!

面白かったからシーズン3まで観たわけですし!

ただこれはもう、好みの問題だと思うのですが、シーズン2までは暗かったんですよ。

作品ジャンルとしては「SFホラー」なので、当たり前といえば当たり前なんですが、全体的に不穏で重苦しい雰囲気。

面白いけど明るい気持ちになる作品ではなかったわけです。

それが、シーズン3に来て、ブワーッと花開きました!

シーズン1では種をまき、シーズン2で大切に育て、そしてシーズン3で一気に…というイメージです。

理由はいくつか考えられるんですが、そのうちのひとつに、主人公の子どもたちが「思春期」を迎えて、作品に「恋」の要素が加わったことが大きいような気がしています。

「恋」は良い面だけでなく、悪い面もありますが、そういった気持ちのすれ違いや衝突も、全部ひっくるめて80年代ポップカルチャーが包み込んでくれます。

「80年代」と「初恋」って相性いい!

パロディとオマージュの違い

パロディとオマージュは何が違うのか論争みたいなものがありますが、僕は決定的な違いは「元ネタへの敬意(リスペクト)」だと思っています。

パロディは、元ネタに愛情はあるけど、少し茶化している感じ。いわゆる「いじってる」状態のもの。これはこれで好きです。

オマージュは、元となった作品をリスペクトしており、それをさらなる高みに昇華させようという気概が感じられるもの。

その定義でいうと、ストレンジャーシングスは、80年代カルチャーへの敬意もりもりリスペクトびんびん物語。

「あの映画のオマージュだ!」と観客を興奮させつつも、決してストーリーの進行を邪魔しないように、ごく自然に挟み込まれます。

「オマージュしてまっせ!みなさん、こういうん好きでっしゃろ?」みたいなドヤが一切ない。

それでいて、わかる人にわかればいいという感じではなく、けっこうはっきりとオマジュります。

「うおおおお!あの名セリフをこいつに言わせるのか!」「ひええええ!ここで、あのシーンの構図を持ってくるわけ!?」と唸りっぱなし。

とくに、シーズン3は僕が好きな作品のオマージュが多かったというのも、一番ハマった要因かもしれません。

おかしな表現ですが、「オマージュのパズル」が奇跡的なバランスで、美しく全部ぴったりハマっていると思いました。

つまり懐古厨ジジイのための作品ってこと?

 

「懐古厨の何が悪いじゃボケ!!」と懐古厨ジジイ(逆ギレマックスのすがた)に進化してもいいんですが、それでストレンジャーシングスを食わず嫌いされてしまっても悲しいのでここはグッとこらえます。

別に「80年代さいこ~!」「あの時代が一番いい時代だったよね~!」なんて言いたいわけじゃないんです。

僕は、世の中はどんどん良い時代になっているなと思っているし、誰もが生きやすい世界になっていると感じています。常に「今」が一番いい。

それを踏まえて、ストレンジャーシングスは今できる最高の「80年代」をやってるんですよ。

ただ昔を懐かしがりたいだけなら、80年代の音楽や映画をそのまま見ればいいだけの話じゃないですか。

そうじゃなくて、2020年の「80年代」をやってるんです。

※実際は2019年の作品ですが字面がよかったので、2020年表記にしています。

「80年代の名作たちに敬意を払いつつ、俺たちの80年代をやろうぜ!」という覚悟みたいなものを感じます。

あえて、この言い方をさせていただきますが、いま一番研ぎ澄まされている「80年代」ではないでしょか。

そういう意味でも、90年代生まれ00年代生まれの人たちにこそ、見てもらいたい作品です。

たぶん「新しい!」と思うはずだから。

 

セブ山の好きなシーン(ちょびバレあり)

シーズン3の終盤で、ある人物とある人物が、トランシーバーで衝撃のやり取りを展開させるのですが、そのシーンで、笑いながら泣きました。

いや、泣きながら笑ったのかもしれません。

「世界を救いたい!」「でも、相手に嫌われたくない!」「それに、友達の前でカッコ悪い姿は見せたくないし…」「いやでも、世界が滅んだら、相手も友達も全部なくなってしまう…!」という葛藤の末に、その人物がとった行動に、まんまとやられました。

緊張と緩和のコンボも決まって、お見事!

シーズン冒頭から張っていた伏線を、ここで回収するんかい!という爽快感も最高です。

あと、ショッピングモールの写真スタジオで、意外となかった組み合わせのふたりが、楽しそうにしているシーンは、自分の記憶として走馬灯に出したいくらい素晴らしかった。

シーズン4の予告がありました

そんな最高を堪能させてくれたストレンジャーシングス様の「シーズン4」はあるのかな? と思って調べてみたら、予告動画がありました!

そこに映っていた人物を見て、「……ッ!!」と、声と息の中間みたいな空気が口から洩れました。

今、一番、「80年代オマージュ芸」が研ぎ澄まされているストレンジャーシングスの新章、楽しみでなりません。

次は絶対、配信されてからすぐ見よ~っと!

この記事を書いた人:セブ山