中島敦の『山月記』の中に、「人生は何事をもなさぬにはあまりに長いが何事かをなすにはあまりに短い」って言葉があるけど、これは「人生は何事かを成さないといけないもの」という前提があるから、苦しさが重くのしかかってきてしまうわけじゃないですか。
今日はじめて会った彼は、私にそう話しかけてきた。
ひどく酔っているようだが、ろれつが回らないなりに、何かを必死に伝えようとしていた。
でも、よく見てほしい。
彼はウーロン茶を飲んでいるだけなのだ。いかにもアルコール入り顔(アルコールはいりがお)をしているが、一滴も飲んでいない。
私は急に恐ろしくなり、二度漬けが禁止されているソースに飛び込み、たちまち紅ショウガ串に姿を変えて、深くふかく沈んでいくのだった。
24年間、道頓堀川の奥底で眠っていたカーネル像の気持ちが、今なら少しわかる気がする。
邪魔すんで……邪魔すんのやったら帰って……ほなさいなら……ってなんでやねん……
静かにそっと吉本新喜劇がリフレインしている。